琺夜の軍制

 本編を読む限りでは、出す必要のない設定。いやね、『菫』も完結したしさぁ・・中途半端なラブシーンよりもジァヴの戦闘シーンよりも、実は7章に一番力入れてたなんて口が裂けても言わないつもりだったけどここで暴露。
 ・・別に緑の某軍曹に触発されてとかそんなんじゃないですよ?

Tome U.(その2) 軍の構成

↑編成(参考人数は歩兵隊。大雑把。基本10進法ながら、非常に変則的)

 ・小隊(Peloton プロトン/Section セクスィヨン)――10〜30人。基本は10人。
 ※実際の作戦では更に隊員を分け、5〜12人の分隊(Escouade エスクァド/Groupe グループ)、2〜5人の班(Équipe エキップ)を作って行動することもある。
 ・中隊(Compagnie コンパニ)――2〜10小隊。基本は10小隊。
 ・大隊(Bataillon バタイヨン)――2〜10中隊。基本は10中隊。
 ・連隊(Régiment レジマン)――2大隊以上。
 ・旅団(Brigade ブリガド)――2連隊以上。
 ・師団(Division ディウィズィヨン)――2旅団、4連隊以上。
 ・軍団(Corps d'armée コール ダルメ)――2師団以上。

 ※兵科により、呼び名が違う場合あり。
 ※陸上自衛隊、旧日本陸軍、現代フランス軍、近代フランス軍のどれとも異なります。完全『傍観神話』設定ですので、ご注意を。

↑階級

 ・新兵(Conscrit コンスクリ)
 ・兵(Soldat ソルダ)
 ・班長(Chef d'équipe シェフ・デキップ)
 ・分隊長(Chef d'escouade シェフ・デスクァド/Chef de groupe シェフ・ドゥ・グループ)
 ・小隊長(Chef de peloton シェフ・ドゥ・プロトン/Chef de section シェフ・ドゥ・セクスィヨン)
 ・中隊長(Chef de compagnie シェフ・ドゥ・コンパニ)
 ・大隊長(Chef de bataillon シェフ・ドゥ・バタイヨン)
 ・連隊長(Colonel コロネル/Mestre de Camp メストル・ドゥ・カン)
 ・旅団長(Brigadier ブリガディエ)
 ・師団長(Général de division ジェネラル・ドゥ・ディヴィズィヨン)
 ・軍団長(Général de corps d'armée ジェネラル・ドゥ・コール・ダルメ)

 ・軍事総長(Général en chef de l'armée ジェネラル・アン・シェフ・ドゥ・ラルメ)

 ※兵科により、呼び名が違う場合あり。

 琺夜軍には、上等兵、軍曹、少尉、大佐、准将などの階級が存在しません。小隊を率いる隊長なら小隊長、大隊を率いる隊長なら大隊長。至ってシンプル。例外は、定員6名の「将軍(Général ジェネラル)」と、1名の軍事総長(Général en chef ジェネラル・アン・シェフ)。


●将軍(Général ジェネラル)

 師団以上を率いて戦うことができるのは、Généralの称号を持つ者、軍事総長、あるいは国王だけです。
 どんな役割であろうが将軍は常にジェネラルなので、例えば比較的小規模な戦闘で大隊を率いている時の将軍の正式名は↑の呼称とは違い、Général de bataillon(ジェネラル・ドゥ・バタイヨン)、連隊を率いている時の将軍はGénéral de régiment(ジェネラル・ドゥ・レジマン)になります。
 将軍は、国王によって任命されます。
 慣例的に、国王を守護すべき親衛隊しんえいたいの隊長が第一位の将軍になります。他5名は通常、歩兵隊、弓兵隊、工兵隊、騎兵隊、戦車隊の中から優秀な兵(通常、大隊長以上)が各一名ずつ選出され、各々の戦績に応じて第二位から第六位まで席次せきじが決められます。数字が若いほど、幕僚ばくりょう会議において国王の近くに席を取ることができ、即ち強い発言力を持つことができます。将軍になる最低条件は、翼馬の騎士であること。
 将軍は、兵科へいかを問わず自由に戦争のための作戦部隊を編成することができます(親衛隊を除く)。歩兵隊から選出された将軍が工兵隊や騎兵隊の兵を作戦に組み込むことも自由ですが、やはり現実には、歩兵隊員は歩兵隊出身の将軍を、騎兵隊員は騎兵隊出身の将軍を立てる傾向があるので、後々人間関係がぎすぎすしないよう、事前に各兵科の将軍に話を通すことが通例となっています。
 「将軍」とは、あくまで彼または彼女個人に対して与えられる称号であり、戦争指揮権なのですが、先に述べた通り、将軍は直接戦闘を行う各兵科から一名ずつ選出されます。このシステムの為、将軍となった者は同時に各兵科のトップと認知され、「隊長(Commandant コマンダン)」と呼ばれるようになります。例えば歩兵隊の将軍なら、歩兵隊隊長(Commandant d'infanterie コマンダン・ダンファントリ)と。
 ※上記の小隊長や中隊長とは違う意味の「隊長」です。日本語が混乱しててすみません。「科長」とかにすべきだったかも。
 ※将軍を「隊長(モン・コマンダン)」と呼ぶのは俗称であり、正しい呼びかけは“モン・ジェネラル”です。しかし、親衛隊に属する将軍だけは、もともと「親衛隊長」なので、唯一“モン・コマンダン”という呼びかけも正式なものとなります。
 一般兵にとって、隊長=将軍は各兵科の代表者であり、団結の象徴です。故に、将軍の席次も彼(女)個人の問題ではありません。兵達が自分の兵科に属する将軍をより上の席次に就かせようと、わざと別の兵科に属する将軍の命令に従わなかったり、異なる兵科で足を引っ張り合ったりすることもあります。この問題が、無類の強さを誇る琺夜軍の小さなほころびとなっています。


●軍事総長(Général en chef de l'armée ジェネラル・アン・シェフ・ドゥ・ラルメ)

 またの名を軍務卿ぐんむきょう(Ministre de la guerreミニストル・ドゥ・ラ・ゲール)。琺夜軍の最高責任者。軍人ではなく軍属の文官で、大臣の一人。軍事行政、主計等の事務を取り仕切っています。・・が、危機に際しては、戦います。翼馬の扱いに長けた兵のみを選りすぐり、6将軍を大隊長とした竜騎兵りゅうきへい連隊(Régiment de dragons レジマン・ドゥ・ドラゴン)を編成する権限があります。この最強の空軍は、普通の軍隊ではどうにもならない敵と戦う時、例えば高い戦闘能力を持つ死神将官をどうしても抹殺する必要がある時などに召集されます。
 『傍観神話』T巻現在では、王女玉葉ぎょくようが軍事総長の地位についています。

 ※歴史上の「竜騎兵」は、「馬で戦地まで移動して戦う歩兵」を意味します。それに対してファンタジー世界の「竜騎兵」は、文字通り「ドラゴン・ライダー」のことです。『傍観神話』世界にもドラゴンは生息していますが、琺夜における「竜騎兵(Dragon)」の意味は、「翼馬に乗って戦う兵士」のことです。

↑兵科
 琺夜軍には、人数の多い方から順に、歩兵隊、工兵隊、衛生隊、弓兵隊、軍楽隊、騎兵隊、戦車隊、親衛隊があります。
 この内、衛生隊と軍楽隊は直接戦闘に参加しません。基本訓練は個別に行いますが、実際の戦場では、役割の異なる兵科が一つの作戦の為に協力します(親衛隊を除く)。
 また、軍内部の秩序維持のみならず、琺夜国内の治安維持、犯罪捜査等を行う憲兵隊けんぺいたい(Gendarmerie ジャンダルムリ)が、独立した組織として存在しますが、ここでは省きます。
 以下、8兵科の簡単な説明。ついでにそれぞれのトップを併記。『傍観神話』T巻現在。

歩兵隊Infanterie(アンファントリ)
 琺夜で最も数が多いのが、歩兵。基本中の基本にして肝心要の存在。
 戦争は、彼らがいなければ何も始まりません。その名の通り、徒歩で戦う兵隊です。近距離戦闘専門。サバイバル能力、格闘術、武器の扱い、団体戦術、特殊な移動技術等、初等軍事学校で習う基本を習得しており、健康で体力があれば、まず誰でも歩兵隊に入れます。最前線で戦うだけでなく、後方支援部隊を守ることも重要な任務。隊員は九割以上男性です。短剣、剣か槍か斧か棍棒、盾、革鎧が標準装備。機動性を重視して、軽装。全身を甲冑で覆うことはありません。橙色で裏打ちされた空色の制服を着ています。
 将軍:クレイ・フェオ=ユーン

工兵隊Service du génie(セルヴィス・デュ・ジェニ)
 野営地の設営、塹壕ざんごう掘り等の土木工事を行う工兵、並びに兵機の扱いと開発、伝令等を行う技術兵の集団。行軍に必要な物資や食料を補給する輜重隊しちょうたいも、工兵隊から編成されます。七割以上が女性です。後方支援が主な役割ながら、軍の命綱とも言える兵科です。緑で裏打ちされた茶色の制服。
 将軍:グエン=サレア=パルフィーナ

●衛生隊Service de santé(セルヴィス・ドゥ・サンテ)
 軍医、獣医、薬剤師、看護士、衛生兵の集団。兵と軍用獣(主に馬)の健康管理、傷病兵の治療と看護、及び軍の衛生管理を担当します。死体の埋葬、排泄物処理、野戦病院の設置などなど、工兵隊と同じく土木工事も重要な任務。武器は携行せず、攻撃も行いませんが、自己防衛の為には戦います。男女の人数はほぼ均等。赤で裏打ちされた白い制服。
 軍医総監そうかん(Inspecteur général de la santé アンスペクトゥール・ジェネラル・ドゥ・ラ・サンテ)
       :エパノス・フース=エディシュバル

弓兵隊Archers(アルシェ)○
 やっぱりその名の通り、弓で戦う兵が弓兵。独立した兵科ではありますが、e葵しゅうき王の治世以前は歩兵隊に属する特殊部隊でした。歩兵の中で、特に射程距離の広い長弓(ウェールズのロング・ボウみたいなやつ)の扱いに習熟した者が弓兵隊に属します。長弓を引くには相当な力が必要なため、九割方男性。腕力だけでなく、視力検査で基準を満たさなければ、弓兵にはなれません(大体両目1.0以上)。長距離戦専門。歩兵の両脇を固めて援護したり、襲い来る敵軍に雨のように矢を降らせたり、特定の誰かを狙って狙撃したりします。真価を発揮するのは、城を拠点にして敵を迎え撃つ時など、受身の戦闘。歩兵や騎兵の突撃を受けると途端に無力になるので、歩兵隊との連携れんけいによって互いの弱点を補い合います。黒で裏打ちされた灰色の制服。
 将軍:翡きょう

軍楽隊Musique(ミュズィック)
 行進曲や軍歌を演奏し、戦闘中に合図のラッパを吹き鳴らすのが楽隊の仕事。通常、戦闘には参加しませんが、いざとなったら武器としても使える頑丈な楽器を持っています。強制ではありませんが、楽器と装備を含めた体重が騎馬の体重の二割以下であることが望ましいとされています。他に求められるのは持久力と肺活量。男女の人数はほぼ均等。集団演技も行うので、制服が派手。赤で裏打ちされた青い制服。金モールとエポレット付き。
 楽長(Chef de musique シェフ・ドゥ・ミュズィック):イトカ=ツァハリーアス

騎兵隊Cavalerie(カヴァルリ)●
 馬に乗り、長槍を持ち、そのスピードと攻撃力で敵陣を突き崩す馬術のベテラン達。騎兵は、身長が170cm以上186cm以下で、着衣、武器、装備品を含めた体重が騎乗する馬の二割以下という規制があります。優秀な兵の場合、身長に関しては大目に見られることもありますが(純琺夜族はちっこいのです)、馬に負担をかける体重規制に関しては、絶対厳守です。肥満厳禁。過度のマッチョも厳禁。華やかな役割の為、貴族の男性が多め。白で裏打ちされた群青色の制服。
 将軍:ジェイド=ユリファール

戦車隊Unité de chars(ユニテ・ドゥ・シャール)
 車輪の軸に大鎌を取り付けた二頭立ての二輪馬車に乗り、敵の歩兵集団に突っ込んで薙ぎ払うのが戦車隊の主な役目。騎兵隊よりも攻撃力は高いものの、戦場の混乱にまぎれて味方の中に突っ込んでしまうと目も当てられないことになるので、扱いが難しく、また、少数です。熟練の工兵が属することが多いので、六割方女性。緑で裏打ちされた灰色の制服。
 将軍:青磁(マルヴェ=ペリード・クリスタロス)

○親衛隊Garde impérial(ガルド・アンペリヤル)
 アンプルー(帝王)の親衛隊です。琺夜国王が西賢の地位を得るまでは、ガルド・ロワイヤル(国王親衛隊)でした。
 国王を護る武装集団です。その任務は、王の身辺警護から情報管理まで多岐に渡ります。王自身が直接戦場に出向く場合を除き、戦争に参加しません。忠誠心、戦闘技術、協調性に秀でた上記各隊のベテラン兵が勤めることが多いものの、文官が所属することもあります。採用年齢は35歳以上。国王と同性であることが望まれるため、全員男性。赤で裏打ちされた黒い制服。
 将軍/親衛隊長:グラジオ・リーク=アッシュダーク

 いつの時代?とか言っちゃいやん。
 ローマ軍とか十字軍とかルイ14世の軍とかナポレオン軍とか、作者の脳内にある中途半端な知識あれこれを結集した結果、出来上がった琺夜軍。主に1670年ぐらいを参考にしたようなしないような。マスケット銃?大砲?ありませんそんなもん。戦術はローマ時代〜中世レベルというアンバランスさ。連隊長がメストル・ドゥ・カンなのにジャンダルムリの意味が現代同様だったり、フランス史好きな人が見れば時代錯誤な単語が出まくりですが、ファンタジーだから!(そればっかり)